Q&A
SDGsをどのように企業戦略に活かせばいいでしょうか?
持続可能な開発目標 SDGs(Sustainable Development Goals)は、2015年に終了したミレニアム開発目標(MDGs)に続く「ポストMDGs」として、2030年に向けて世界的な優先課題、及び、世界のあるべき姿を明らかにし、一連の共通の目標やターゲットを軸に、地球規模の取り組みを進めていくものです。企業規模や業種を問わず、企業は、自社における優先課題を決定して、目標を定めて経営へ統合しながら進める必要があります。
企業のCSR担当者にとって、はじめにSDGsが何であるかを勉強することは大切ですが、単に知識を吸収するだけではなく、今後SDGsをどのように実務で活用していくのかが重要になってきます。先日、そのヒントとなる企業行動の指針を示した「SDGコンパス」が公表されました。改めて、SDGsについての基本知識の確認と、どのように自社で展開していくのかを考えていきましょう。
SDGsはなぜ企業にとって必要なのか?
2015年の9月25日から27日、ニューヨーク国連本部において「国連持続可能な開発サミット」が開催され、150を超える加盟国首脳の参加のもと、その成果文書として「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」を採択されました。SDGsは、その前身となるミレニアム開発目標(MDGs)と異なり、すべての企業に対して持続的発展のための課題を解決するように求めています。(図:世界を変えるための17の目標)
では、なぜ企業にとって必要となるのでしょうか?SDGsに取り組むことで、以下のメリットが考えられます。
- 将来のビジネスチャンス(事業の種)
- 企業価値の向上
- ステークホルダーとの関係強化により信頼向上
- 社会と市場の安定化
- 共通言語の使用と目的の共有
アジェンダ(課題)は、人間、地球及び繁栄のための行動計画として、宣言および目標を掲げており、17の目標と169のターゲットからなる「持続可能な開発目標(SDGs)」です。2015年から2030年までに、貧困や飢餓、エネルギー、気候変動、平和的社会など、持続可能な開発のために以下の目標達成を目指していきます。
■17の持続可能な開発目標
(各課題のKPIについては「SDGs達成に向けた日本への処方箋」を参照してください。)
1. 貧困をなくす
2. 飢餓をなくす
3. 健康と福祉
4. 質の高い教育
5. ジェンダー平等
6. きれいな水と衛生
7. 誰もが使えるクリーンエネルギー
8. ディーセント・ワークと経済成長
9. 産業、技術革新、社会基盤
10. 格差の是正
11. 持続可能なまちづくり
12. 持続可能な消費と生産
13. 気候変動へのアクション
14. 海洋資源
15. 陸上の資源
16. 平和、正義、有効な制度
17. 目標達成に向けたパートナーシップ
ポイント1.自社のバリューチェン上の影響を確認する
SDGsの内容についてはご理解いただけたかと思いますが、企業担当者にとって、SDGsをどのように自社に組み込んでいったらいいのかが知りたいポイントなのではないでしょうか。詳細の進め方については「SDGsコンパス」の中身に譲るとして、この場では「SDGsコンパス」の中から注目すべきポイントについて確認していきましょう。基本は次のステップで進むことを提唱しています。
(図:「SDGsコンパス」P12より「実例:バリューチェーンにおけるSDGsのマッピング」)
- STEP1 SDGsを理解する
- STEP2 優先課題を決定する
- STEP3 目標を設定する
- STEP4 経営へ統合する
- STEP5 報告とコミュニケーションを行う
先ほど、SDGsの17目標を示しましたが、全ての目標が各企業にとって重要であるわけではありません。業界特性や企業の考え方次第で、各目標に対しての貢献度や事業におけるリスクや機会は大きく違ってきます。まずは、自社にとっての優先課題を設定しましょう。GRIガイドライン第4版では、優先課題を設定する際に、自社にとっての影響度とステークホルダーにとっての影響度が高い課題を設定することをすすめていますが、まずは自社にとってのバリューチェーン上での影響領域を確認していきましょう。そうすることで、自社にとってのリスクや機会を考えることができ、それがSDGsの課題とどのように関係していくのかが理解できるはずです。その課題を解決することで自社におけるリスクも改善することができ、更に、社会的課題も解決することができれば企業として実施する意義も出てくるのではないでしょうか。
ポイント2.「インサイド・アウト」から「アウトサイド・イン」アプローチへ
今回のガイドラインで目新しく映ったのは「インサイド・アウト」から「アウトサイド・イン」へのアプローチです。サスティナビリティ戦略を考えるにあたり、自社についてのSWOT分析などを活用して、自社の強味を活かしたインサイド・アウトの戦略を立案する傾向が強いと思います。いわゆる「本業に即したCSR」も、自社における強味を活かした戦略と言えるのではないでしょうか。企業としては経営にもステークホルダーにも承諾を得やすく進めやすい方法だと思いますが、そのような目標の進め方では、フォアキャスト的な進め方になりがちになり、グローバルな社会的、環境的な課題に十分対処することはできなくなってきています。最近では、リーディング企業を中心にバックキャスト的な「アウトサイド・イン」アプローチの視点で意欲的な目標を設定することで、世の中におけるインパクトが与えられて、業界のリーディング企業が同業者に働きかける効果を生み出し始めています。ただし、その意義については勿論ステークホルダーからの賛同を得ないと、企業としての持続的な取り組みにならないケースがありますので慎重に進める必要があるでしょう。
(図:「SDGsコンパス」P19より「実例:目標設定アプローチの採用」)
ポイント3.最終的には経営へ統合する。
CSRはCSR部が実施するものではありません。今後はCSR部だけが経営と確認して進めるだけではSDGsの対応が難しくなってきているのは明白でしょう。SDGsの課題を解決するためには、事業部、人事部、開発部、環境部など様々な部門が一体となって進めていく必要が出てきているのです。今回のSDGsの発表によって、CSRはもはやCSRに留まるだけではなく、経営に統合して進めていく段階にきているのです。
(図:「SDGsコンパス」P23より「実例:組織に持続可能な目標を組み込む」)
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執筆者プロフィール
猪又 陽一 (いのまた よういち)
アミタ株式会社
シニアコンサルタント
1970年生まれ。1994年早稲田大学理工学部卒業後、アミタに合流。環境・CSR分野における戦略・実行、コミュニケーション、教育など幅広く従事。環境省「優良さんぱいナビ」、企業ウェブ・グランプリ受賞サイト「おしえて!アミタさん」「CSR JAPAN」をプロデュース。2016年3月には、著書「CSRデジタルコミュニケーション入門」(インプレスR&D社)を出版。現在、企業や大学、NPO・NGOなどで講演、研修、コンサルティング、第三者意見執筆(南海電鉄 、リケンテクノス 、アマダホールディングス)など多数実践中。
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