Q&A
今ある環境報告書をCSRレポートに作り替えたいのですが、どのようにすればよいでしょうか
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環境報告書もそうでしたが、CSRレポートには決まったフォーマットはありませんので、構成、内容、ページ数、レイアウト等を企業によって自由に記述することが可能です。もちろん、CSRレポートに入れた方がよい内容はありますが、基本は自社で決めて製作していいものなのです。いきなりCSRレポートで実績がある企業レベルを目指すのではなく、あくまで環境報告書の延長として考えていきましょう。
今回は4つのポイントを押さえて解説します。
CSRレポート作成の参考になるものとまず実施すべきこと
環境報告書では環境省が発行している環境報告書ガイドライン(2012年度版)を参照していましたが、CSRレポートではGRI(グローバルレポーティングイニシアチブ) 等の国際的なガイドラインが役立つでしょう。
それを確認した上で、以下のことからスタートしてみてください。
- 現在実施しているCSR(環境)活動を振り返る。
- 第三者の専門家やステークホルダーに意見を聞く。
- 会社のCSR方針を経営者と確認する。
- CSRレポートの活用シーンをイメージして製作する。
現在実施しているCSR(環境)活動を振り返る
CSRレポートを製作し始める前に、自分たちのまわりで実施されているCSR(環境)活動について、CSR担当部署のメンバーはもちろん、できれば部署を横断して話し合ってみることをおすすめします。その際には、ISO26000 のフレームワークを使うと話がまとまりやすくなります。是非、7つの中核主題に沿って自社の取り組みをまとめてみましょう。
また、こういった作業は本社のCSR担当者が実施するものだと思われがちですが、各事業場で実施することにも大変意義があります。本社が考えているCSR方針と事業場の方針が一致しているかどうかが確認できるからです。実際に自分たちが行っている事業活動が会社にとってどのような位置付けにあるのかが理解できます。CSRは本社の業務だから自分たちには関係ないということではなく、まずは事業場でも話し合ってみることが重要です。
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第三者の専門家やステークホルダーに意見を聞く
通常、CSRレポートではページの最後に第三者意見が記載されています。第三者意見とは、その企業に特別に利害関係がない第三者の方から意見をいただくことです。自社で整理されたCSRへの取り組みについて、第三者からどう見られているのか、期待されているのか、出来ていない点だけではなく出来ている点等の理解につながり効果的です。
また、ステークホルダー(利害関係者や地域住民等)から意見を聞いてみるのも1つの方法で例えば、自社工場近隣の清掃活動の印象や地域行事への参加等の反応を見ることができます。一番身近な地域との関わりは、CSR活動において大切なことなので、是非実践してみてください。
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会社のCSR方針を経営者(工場長)と確認する。
CSR活動を進めていく上で経営者のCSRに対する理解は大切です。
理解を深めることによって、CSR活動の社内への巻き込み方が変わってきます。前述した内容を実施することで、自社のCSR活動の現状は整理されていると思いますので、その情報を持って、経営者(工場長)に報告しましょう。そしてCSR活動への課題を共有することが大切です。どの領域で、どのようにCSRを実践するのかを経営者(工場長)と確認し、自社としてのCSR活動の方針を作成してください。
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CSRレポートの活用シーンをイメージして製作する。
自社の活動が整理されて、経営者とCSRの活動方針を確認したら、いよいよCSRレポートの製作に着手しますが、ここで注意が必要です。その際に、必ず活用シーンを想定して作成することです。折角苦労して製作したCSRレポートも、活用シーンを想定せずに作成してしまうと、自己満足的なものになり、誰にも読まれないレポートになってしまいます。
改めてお聞きしますが、CSRレポートは製作した後に、どのような使い方をイメージされていますでしょうか?何故今回、環境報告書からCSRレポートへと転換しようと思ったのでしょうか?もう一度考えてみてください。
活用シーンがイメージできれば、誰に対して何の目的を達成するためのレポートなのかが明確になります。そうすれば、自ずとそのターゲットに合わせた内容になるはずです。
タイプ別にまとめた下記表もご参考ください。
タイプ | ターゲット | 目的 |
網羅型 | 投資家・専門家 | 格付けアップ 投融資促進 |
営業型 | 取引先 | 顧客創出 |
社内報型 | 従業員 | 社内のCSR浸透 |
会社案内型 | 就職活動者・一般消費者 | リクルート活動 |
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以上、いかがでしたでしょうか。いままで環境報告書を作成していたのであれば、情報の見方や整理の仕方で、だいぶ世間一般的にイメージされるCSRレポートに近づくと思います。想定したターゲットの方々に読んでもらえるCSRレポートになるように、情報をまとめていきましょう。
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執筆者プロフィール
猪又 陽一
アミタ株式会社
環境戦略支援グループCSRプロデューサー
早稲田大学理工学部卒業後、株式会社ベネッセコーポレーションに入社。理科教材やダイレクトマーケティングを経験後、外資系ネット企業やベンチャーキャピタルを経て株式会社リクルートエージェントに。インターネット転職市場の新規事業を軌道に乗せた後アミタに合流。環境・CSR分野における仕事・雇用・教育に関する研究に従事。環境省「活かそう資源プロジェクト」メンバー。GC-JNの分科会幹事を歴任。現在、CSRレポート比較サイト「CSR JAPAN」をプロデュース。企業、大学などで講師やファシリテーターなど経験多数。2010年企業ウェブ・グランプリBtoB部門「おしえて!アミタさん」受賞。学生へのCSRレポート普及などのプロボノとしても活躍。
Twitter:http://twitter.com/inoyoko1226
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