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Q&A

廃棄物処理法について行政に相談に行きたいと思います。相談にあたって気をつけるべき点を教えてください。

行政へ相談する際には、目的を明確にし、十分な準備をしていくことが大切です。
(※ 本記事は2013年5月21日の記事をもとに、2016年5月10日に更新しています)

行政は事業者の質問に対して法解釈の「シロ・クロ」の判定をする機関ではありません。関係法令に精通していて、行政処分の権限のある機関であるという認識をしましょう。相談は、行政の担当部署の担当者が対応しますが、相談に対して仮に「問題ない」という回答であっても、基本的にその行政自体がお墨付きを与えるものではありません。疑義のあることを相談して行政とコミュニケーションをとることによって、リスクを最小限に抑えることが行政相談のポイントとなります。
基本的に相談を受けた行政は、法律上問題のないぎりぎりのラインがどこであるかを教えるのではなく、通常はリスクの低い安全な方法を指導します。相談に来た相手が廃棄物処理法をよく知らない場合には、特にその傾向が強くなります。現実的でない運用方法を指導されることがないように、事前にしっかりとした準備をしていくことが重要です。

では、どのような準備をすればよいのでしょうか。
今回は手順ごとにポイントをお伝えします。

手順とポイント

1. 状況を把握する(担当者の話を聞く、現場を確認するetc)

廃棄物処理法について問題や疑問が発生したら、まず状況を把握しましょう。担当者が複数いて、各担当者の話を聞いただけでは分からない場合は、現場を直接確認することになるでしょう。もし汚染が発生しているか、明らかな違反行為が行われているのであれば緊急に対処するようにしてください。

2. 相談する行政を把握する

相談する行政は、産業廃棄物の場合は都道府県や政令市の担当部署、一般廃棄物の場合は市区町村の担当部署になります。排出事業者の立場で相談する場合は、排出事業場を管轄するこれらの自治体となります。

都道府県・政令市へ相談する場合は、相談の内容によって、全体を統括している本庁の部署、排出事業場を管轄する地域の出先機関(保健所や地域振興局など)の部署のいずれに相談するかも検討します。基本的に都道府県・政令市の全域に関する場合は前者、個別の排出事業場の場合は後者になります。

3. 関係する法律・条文を調査する / 自社の考え方や対応策を整理する

関係する法律や自治体条例の条文などを調査して、自社の考え方や対応策を整理しましょう。場合によっては、現場の担当や環境部門だけでなく、関係する生産部門、法務部門、広報・IR部門、社外の専門家とも相談し、社外への公表、行政への報告をどうするかについても検討します。

4. 提出用の資料を作成する

整理した関係法令と自社の見解を記載した資料を提出用に作成することをお勧めします。必要に応じて説明の手順や落としどころをまとめた自社用の資料も作成して他の出席者と共有するなどもよいでしょう。

5. 行政担当者へアポイントをとる

訪問する際には事前にアポイントを取りましょう。あらかじめ相談内容を伝えておくと、該当する基準や通知などを詳しく知っている担当者に応対していただける可能性があります。

6. 行政に相談する

現状を説明するだけで「どうしたらよいでしょうか?」と聞くのではなく、自社の見解や対策案を説明したほうがよいでしょう。場合によっては他の行政の見解も提示します。準備しておいた資料を用い、自信を持って説明すれば、廃棄物処理法をよく勉強しておりリスクや注意点も分かった上での相談だということが伝わります。相談を受ける側としても、自分が推奨する方法を提示するのではなく、相談者の見解にアドバイスをする形になるので、柔軟な運用方法を容認しやすいでしょう。

相談に行くと「排出事業者の責任を果たしているのか?」「適正処理は確保されるのか?」などの指摘を受けることが多いようです。想定問答集を用意しておき、「その問題については~という対策を取る予定です」と説明できると、責任回避をしているのではなく、主体的に取り組んでいることが分かります。

また「~はダメです」や「~は認められません」と言われることがあります。このように言われたときはそれが法律の条文に書かれているのか、法律を解釈するとそうなるのか、行政としての単なる要望なのかを確認するようにしてください。法律の条文は後で確認し、具体的にはどこが法の規定なのか、重点をおいて対処すべき点はどこなのかを確認します。

なお、法の規定ではなく行政としての要望(行政指導)である場合は、それに従う法的義務があるわけではありませんが(行政手続法第32条参照 )、管轄行政の要望としてできる限り尊重しましょう。

7. 記録をとる

相談の結果は、議事録を作成して記録として残しておきます。基本的に行政側から何らかの文書が交付されたり、お墨付きの証拠が与えられることはありませんので、相談者側による記録ということになりますが、今後の対策立案の根拠となるばかりでなく、何か問題があった場合に「相談したことを示すエビデンス」となります。もちろん、将来同様の疑問や問題が生じたときの資料にもなります。

稀ではありますが、相談内容及び行政の担当者によっては、議事録による相談の事実確認や相談した運用で問題ない旨をメールで返信するなどの対応をしてくれることがあります。行政の一担当者に法的な是非を決める権限はなく、行政自体の正式なお墨付きではありませんが、実務上はそこまでが望める限界になると思います。

いずれにしても、指導する行政と適切なコミュニケーションをとることによって、大きな問題になることを未然に防止するように努めることが行政相談の実務上のポイントとなります。

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執筆者プロフィール

mr.okada2016.jpg岡田 健一 (おかだ けんいち)
アミタ株式会社
環境戦略機能チーム チームリーダー

環境領域におけるコンプライアンス対応、リスクマネジメント、環境ビジネス創出などに関する専門家として、企業や各種団体の研修講師を務めるほか、法と実務に精通した課題解決や事業企画のコンサルティング実績多数。企業へのアドバイザリー、行政対応、処理会社の現地確認など、豊富な事例と経験に基づいた実践的な講義を行う。

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