ロート製薬株式会社|代表取締役会長 兼 CEO 山田 邦雄 氏 シリーズ「経営者が語る創業イノベーション」インタビュー(第二回) | 企業のサステナビリティ経営・自治体の町づくりに役立つ情報が満載

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コラム

ロート製薬株式会社|代表取締役会長 兼 CEO 山田 邦雄 氏 シリーズ「経営者が語る創業イノベーション」インタビュー(第二回)経営者が語る創業イノベーション

rohto_header.jpg創業者は、社会の課題解決のため、また、人々のより豊かな幸せを願って起業しました。その後、今日までその企業が存続・発展しているとすれば、それは、不易流行を考え抜きながら、今日よく言われるイノベーションの実践の積み重ねがあったからこそ、と考えます。

昨今、社会構造は複雑化し、人々の価値観が変化するなか、20世紀型資本主義の在りようでは、今後、社会が持続的に発展することは困難であると多くの人が思い始めています。企業が、今後の人々の幸せや豊かさのために何ができるか、を考える時、いまいちど創業の精神に立ち返ることで、進むべき指針が見えてくるのでは、と考えました。

社会課題にチャレンジしておられる企業経営者の方々に、創業の精神に立ち返りつつ、経営者としての生きざまと思想に触れながらお話を伺い、これからの社会における企業の使命と可能性について考える場にしていただければ幸いです。

(公益社団法人日本フィランソロピー協会理事長 高橋陽子)

ロート製薬株式会社「経営者が語る創業イノベーション」インタビュー
第1回 第2回 第3回 第4回

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人が主役の社内風土

高橋:それぞれにエッジの効いたチャレンジをされながら、一方で社会貢献活動にも熱心でいらっしゃいます。

復興支援といえば、東日本大震災のときに設立なさった「みちのく未来基金(※3)」は、他社と一緒に設立されましたが、まさにコレクティブ・フィランロソピーの発想で素晴らしいと思いました。声をかけられたのは、どのような経緯で?

山田氏:自社だけでは継続が難しくとも、それぞれの業界をまたがって民間企業3社くらい集まれば、三本の矢じゃないけれど、簡単には折れないだろうと考えたんです。たまたまご縁のあったカゴメさんとカルビーさんに話すと、二つ返事でやりましょうとなり、すぐに合同の検討チームができた。4、5月で方向性を決めて、親御さんを亡くされた子どもさんたちをサポートすることになって、一気呵成に進みました。

rohto_2.JPG高橋:社員が現地に滞在して運営なさって、25年継続(※4)というのもすごいなと思いますが、社員は、どのように募られたんですか?

山田氏:震災後すぐに社員全員にメールで声をかけると、すぐに50人、60人の手があがって、むしろ選ぶのが大変なくらいでした。
トップダウンだと「言われ仕事」になるけれど、スタッフが自らやっていることなので、その精神を見守っていこうと。2年前後で派遣スタッフを交代しながら続けています。

画像説明:東日本大震災後、支援活動に参加する社員を募ると5、60人が手をあげて、選ぶのに大変でした。

高橋:現地に行かれた方は、普段の仕事にはない、いろんな経験をなさったでしょうね。

山田氏:苦労もしたけれど、一人ひとりの幅や思いの深さが増して、成長してくれたんじゃないかと思います。

高橋:御社では「人が主役」と提唱なさって、社員の自主的な参加を大切にしておられますね。「肌ラボ」も社員のアイデアからはじまったと聞きますと、日常の仕事のなかでも、皆さんの声や発意を大切にしていらっしゃるんだなあと。そのために社内もオープンに、風通しのいい風土作りに注力なさっている。会長さんを「邦雄さん」と呼ぶ「ロートネーム」もありますね。

山田氏:それも仕掛けですね。

高橋:会長室は、あるんですか?

山田氏:役員の個室は置かず、社員が相談しやすいように、幹部は奥ではなく通路側に座っています。各部署も仕切がなく、オープンオフィスです。

高橋:そうなると、幹部も社員もお互いに様子が分かりますね。

山田氏:社員同士もオープンな場所で議論するので、議論が盛り上がっていたら「あの企画決まったのかな?」と想像できますし、難しい顔をしていたら「ちょっともめているのかな?」と様子が分かりますよ。

高橋:そういう会社なら、社員には働きやすそうですね。

山田氏:そうばかりでもないようです。新しくキャリア採用で入社した人に集まってもらったら「今までの常識やルールと違うので、何をしたらいいのかわかりにくい」とか「ロートのいいところもわかるけど、やりにくい」など、いろいろありました。

高橋:数字でゴールを立てたほうがわかりやすいのでしょうね。最近話題の「兼業解禁」の反応はいかがですか?

山田氏:会社が大きくなって、仕事が専門化して担当別になってくると、キャリアの深堀りはできるけれど幅が広がらない。会社でいい仕事をしてもらうためにも、役立てばいいと思っています。

高橋:会社に対して、なんらかの貢献や成果が見えないといけないんでしょうね。

山田氏:兼業は自由時間にするものですから、特に縛りもないのですが、結果的には、仕事の時間も密度濃くしないといけないから、効率化も考えてくれるだろうと思っています。

高橋:どのように決まったんですか?

山田氏:スローガンと同じで、新しい働き方を考えるプロジェクトがあり、自由度やフレキシビリティが欲しいという意見があったので、思い切ってやってみようかと。

高橋:プロジェクトは、社員が手をあげて作るんですか?

山田氏:基本的には、こっちから仕掛けてプロジェクトを実行したい人を募ると、手があがるという形が多いですね。いろんな意味で実験中という感じです。

つづく


※3「みちのく未来基金」
震災で両親・片親を亡くした遺児に対して「大学、短大及び専門教育への進学」のサポートを中・長期的に行い、東北ひいては日本の復興を支えていく人材を育成する事に寄与する。
※4 震災当時おなかのなかにいた子どもが、高校卒業後の進学先(大学・短大・専門学校)に入学し卒業するまで。

話し手プロフィール

rohto_mr.yamada.jpg山田 邦雄(やまだ くにお)氏
ロート製薬株式会社
代表取締役会長 兼 CEO(最高経営責任者)

1956年大阪府生まれ。東京大学理学部卒業。慶應ビジネススクールMBA(経営学修士)を取得。
1980年ロート製薬に入社。1991年取締役就任。
1992年に専務、1996年に副社長、1999年に社長を経て、2009年6月から現職。

聞き手プロフィール

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高橋 陽子 (たかはし ようこ)
公益社団法人日本フィランソロピー協会
理事長

岡山県生まれ。1973年津田塾大学学芸学部国際関係学科卒業。高等学校英語講師を経て、上智大学カウンセリング研究所専門カウンセラー養成課程修了、専門カウンセラーの認定を受ける。その後、心理カウンセラーとして生徒・教師・父母のカウンセリングに従事する。1991年より社団法人日本フィランソロピー協会に入職。事務局長・常務理事を経て、2001年6月より理事長。主に、企業の社会貢献を中心としたCSRの推進に従事。NPOや行政との協働事業の提案や、各セクター間の橋渡しをおこない「民間の果たす公益」の促進に寄与することを目指している。

主な編・著書

  • 『フィランソロピー入門』(海南書房)(1997年)
  • 『60歳からのいきいきボランティア入門』(日本加除出版)(1999年)
  • 『社会貢献へようこそ』(求龍堂)(2005年)

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