コラム
あなたの会社に潜む土壌汚染のリスク。認識していますか?知って得する、土壌汚染の新常識
はじめまして、君津システム株式会社の鈴木喜計です。 簡単に私の自己紹介させていただきます。まだ土壌汚染という言葉も認知されてなく、調査手法なども確立されていない1980年代後半から、土壌汚染調査・浄化に対して数多くの企業や自治体のお手伝いをしてきました。
その経験を踏まえた話題や技術紹介についてこれから数回にわたり土壌汚染に関するコラムを進めてまいりますのでどうぞよろしくお願いします。
土壌汚染浄化の必要性
公害史を紐解けば、土壌汚染は最古の公害問題として江戸時代にまで遡ることができます。鉱山や精錬所の排水や煤煙が農地に鉱毒被害をもたらしたもので、明治初期の足尾鉱毒事件では、渡良瀬川へ流出した重金属類が下流域の農作物に被害を与え、企業は賠償金や浄化費用で約60億円の支出を余儀なくされました。
また、大正年間以来、富山県神通川流域の中年婦人から骨軟化症・骨粗鬆症様の病変により、四肢・骨盤・脊椎・肋骨に変形・萎縮・骨折をきたし疼痛を伴う「イタイ・イタイ病」が確認され、岐阜県神岡鉱山由来の慢性カドミウム中毒でカルシウム脱失による骨疾患として昭和43(1968)年に公害病に認定されました。
第2次世界大戦後の経済成長過程では、農用地以外でも有害物質を起因とする土壌汚染が発生することになりました。これまで、多くの事業者の方が土壌汚染を調べ浄化や掘削などを行った方がいらっしゃると思いますが、なかなか浄化完了を果たすことができないご経験をされてきたのではないでしょうか?
最近では、土壌汚染の問題は、不動産売買関連事業者も含め多くの事業者の方に関係してきております。昨今の事業場の立替や増設、閉鎖などの際には、法令を含め、先ずはデューデリジェンス等を含めた適切な土壌汚染調査を行い、リスクの判断をしなければ、売却はおろか再利用さえもできなく環境債務となり、資産除去債務の対象にもなってきます。
地質構造と汚染物質の関係を科学的に解き明かすことが最重要
人に病気があるように土壌・地下水汚染の問題は、大地の病に比喩できます。発熱で罹患が察知されるように、地下水の汚染濃度の高低で汚染が確認されます。大地の病を根治しようとすれば、地下水汚染濃度の高低や基準値評価は然したる重要な意味を持つものではなく、汚染メカニズムの究明が重要な課題となります。
人が病気に罹患した場合、そのうち治るだろうと放置するケース、売薬を飲んで過ごすケース、医師の診察を受けるケースなど様々ですが、大地の病でも同様の行動パターンでしょう。
しかし、この病は「蓄積性汚染」の特徴を有すことから「そのうち治るだろう」とする自然治癒に期待をし「売薬を飲んで過ごす」対症療法では悪化を招くばかりで、医師による診断と治療が不可欠です。つまり、地質汚染機構解明調査に始まる汚染浄化プログラムの展開が不可欠といえます。
病人を診察治療する医師は、様々な患者の病状を詳細に検査・診察し、病気の原理や理論である病理学に基づく正しい診断を下し、適切な治療方針を樹立し、最適な投薬や外科手術を施し、やがて患者は治癒して社会復帰することができます。
大地の病の治癒過程も同様に考えれば良く、浄化対策という治療の開始以前に汚染メカニズムや汚染範囲など汚染現場の確定診断が下されていなければなりません。この比喩からも、診断のない治療、つまり、土壌・地下水汚染の機構解明調査のない浄化対策などあり得ないことがご理解いただけるでしょう。
また、医療現場では、誤診や医療ミス、検査漬けは許されませんし、たとえ優秀であっても医師以外の者が外科手術を行うことはあり得ませんが、わが国の土壌・地下水汚染分野では必ずしもそうではないのが実情です。
30余年にわたり、環境地質学に立脚した土壌・地下水汚染の機構解明調査法や汚染診断法、さらには汚染浄化対策にいたる一連の独創的な技術開発と現場実証を行い、完全浄化を継続してきた経験を基に今後も色々なテーマをご紹介していきたいと思います。
次回は「間違いだらけの土壌汚染対策」をテーマでお届けします。
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執筆者プロフィール
鈴木 喜計 (すずき よしかず)
君津システム株式会社
代表取締役
1973年君津市役所に入所。31年間公害問題の調査研究・技術開発に従事し、土壌・地下水汚染の調査手法や浄化技法の開発・検証・普及に努める。
いままでに実施した地質汚染調査・浄化の実績は海外を含め100件を超え、240もの学術論文/研究発表、13巻の著書(共書)を持つ。その専門性が認められ、平成9年に起こった日本初の地下水汚染事件での鑑定人や平成14年土壌汚染対策法での国会参考人を担当、土壌環境基準設置委員(環境省)、廃棄物処理法改正委員なども歴任した。平成16年に「君津システム株式会社」を起業し現在に至る。
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